振込手数料を売り手が負担した場合のインボイス対応

インボイス制度が開始して様々な疑問が出ているのではないでしょうか。当事務所にも顧問先様から「この請求書はインボイスの要件を満たしていますか」「返還インボイスを売り先が準備してくれるようなんですが、それはいいのでしょうか」など色々なご質問をいただいています。本日その中でも皆さんが直面するであろう「振込手数料」の処理、につて記載します。

  • 振込手数料は誰が誰に払っている?
  • インボイス対応(買い手負担の場合)
  • インボイス対応(売り手負担の場合)
  • まとめ

振込手数料は誰が誰に払っている?

振込手数料は誰が誰に払っていのでしょうか。

答えは、「振り込む人」が「自身の口座の銀行」に払っています。

つまり、自分の口座から他の口座に振り込むために、その手数料を自身の銀行に払って振込処理をしてもらっているのです。

例えば、私があなたからA商品を購入し、あなたの口座に振り込む際、私は私の口座のある銀行に手数料を払ってあなたの口座に振込処理をしてもらいます。

ただ、ここでややこしいのは、振込の際に「振込手数料を先方負担としますか?」という☑項目が画面に表示されるので、先方負担とした場合は、「自分ではなく先方が払った」と考えますよね。

違うんです。

例えば、先ほどの例と同様下記商品を私があなたから買ったとします。

A商品10,000円

振込手数料550円(内消費税50円)

の場合。

私は10,000円をあなたに、550円を銀行に払います。

ここで、「振込手数料を先方負担としますか?」にチェックを入れた場合

私は9,450円をあなたに、550円を銀行に払う。

または、

私は10,000円をあなたに、550円を銀行に払い、別途立替えた550円をあなたに請求する。

わかりますか?

どのパターンでも振込手数料は私(買い手)が銀行に払うんです。

私が銀行に払った振込手数料をあなたが負担するというのは、その分値引きを入れる、もしくは一旦私が立替えて後ほど精算する、ということです。

買い手負担の場合

では、振込手数料を買い手(わたし)が負担した場合の売り手(あなた)のインボイス上の対応はどのようなものでしょうか。

売り手は振込手数料の負担はないので、インボイス対応は必要ありません。

売り手負担の場合

次に、振込手数料を売り手(あなた)が負担した場合のインボイス上の対応はどのようなものでしょうか。

3パターンあります。

1パターン目の仕訳(立替処理)

普通預金 9,450円 / 売上高 10,000円

振込手数料550円(消費税区分:課税仕入10%) /

この場合、振込手数料に対する消費税50円を仕入税額控除に使用するためには銀行が買い手(わたしに)発行したインボイスを保管する必要があります。

つまり、買い手(わたし)に対して、「銀行が発行したインボイスを当社に送ってくれ」と依頼する必要があります。

面倒ですね。

2パターン目の仕訳(値引処理)

普通預金 9,450円 / 売上高 10,000円

売上 550円(消費税区分:対価の返還等) 

この場合、売り手側では仕入税額控除を行わないので銀行が買い手に発行したインボイスの受領は免れます。ただ、インボイス制度には返品の時、売り手に「返還インボイス」の発行が義務づけられていますので、原則売り手(あなたは)返還インボイスの発行が必要です。

返還インボイスに関しては、1万円未満の返品についてはその発行義務が免除されています。振込手数料が1万円以上になることは(今のところ)まずないので、この処理をおこなえば「インボイス」「返還インボイス」ともに発行する必要がなくなります。

ただ、売上を低くさせる効果があるこの処理を採用したくない、今まで振込手数料として仕訳していたので会計処理を変えたくない、など色々な要望があります。そこで次の方法です。

3パターン目の仕訳(折衷案)

普通預金 9,450円 / 売上高 10,000円

振込手数料 550円(消費税区分:対価の返還等)

この場合、売り手側では仕入税額控除を行わないので銀行が買い手に発行したインボイスの受領は免れます。そして、値引処理同様返還インボイスの発行も免れます。しかも、勘定科目を振込手数料とすることで従来の会計処理から変更することなく、売上高を下げることなくインボイス制度に対応することが可能となります。

まとめ

上記の様に、いろいろなパターンがあります。この際に、

・そもそも振込手数料は買い手が自分の銀行に払うものなんだから買い手が負担、と統一する。(買い手負担の場合参照)

・自社の会計処理だけで対応する(売り手負担の場合:値引処理 折衷案 参照)

取引先を巻き込むか否かは経営判断です。金融機関の経営状況もよろしくない昨今、振込手数料も値上の波を受けています。現状、振込手数料の負担が大きくないとしてもこの際に取引先と振込手数料について一度確認してみるのもいいのではないでしょうか。