収入? 所得? 控除? 

今回は個人所得税について解説していきます。

事業を行っている皆様であれば、収入と所得の違い、経費と控除の違い、はたまた所得控除と税額控除の違いは理解していて当然だと思います。が、念のためここでは先に述べたものたちの違いを説明し最後に控除を数種類紹介したいと思います。なお、お手元に確定申告書を準備していただきながら読んでもらえると理解が深まると思います。

僕は確定申告していないので関係ないや。。と考えている法人役員の皆様!

関係あります。大ありです。今回の内容を理解していただければ、法人から資金を動かす際に、役員報酬、退職金、配当など、どの方法で行うべきか、という考えの基礎となりますので興味をもっていただけると幸いです。

  • 個人所得税の計算式
  • 収入と所得
  • 所得控除と税額控除
  • 所得控除の紹介
  • まとめ

個人所得税の計算式

収入-経費=所得

(所得-所得控除)×税率=税額

税額-税額控除=納付税額

収入と所得

早速ですが収入と所得の違いは何でしょうか。上の算式を見てください。

個人事業を行っている方の場合、収入とは簡単に言えば「売上」です。単純に相手先から入ってきた金額及び入ってくるであろう金額を指します。そして、その収入を生むために使う費用の事を経費といいます。さらに、収入(売上)から経費を差し引いたものを所得と呼びます。

役員報酬の方は、額面が収入に当たります。そして、個人事業主の様に経費を入れることはできないですが、役員報酬や給与には「給与所得だけ経費という概念がないのは不公平なので、一定額を経費としてを認めてあげよう」との趣旨で給与所得控除があります。額面(収入)によりますが最高で195万円の控除が認められます。

例えば、役員報酬を年間1,500万円とした場合、1,305万円(1,500万円-195万円)が所得となります。※給与所得控除は後述する「所得控除」や「税額控除」とは別ものです。「控除」とついていますが概算経費と考えてもらった方が理解しやすいかと思います。

そして、収入から経費を差し引いたものを控除前所得と呼び、R4年確定申告書では⑫を指します。

この控除前所得は銀行融資などの際に見られる指標です。これから住宅ローンや車両ローンを考えている方はここの金額に注意してください。

所得控除と税額控除

所得まで理解したところで続いて「所得控除」と「税額控除」について記載します。

この2つの控除は読んで字のごとく「所得」から控除するものと「税額」から控除するものという違いがあります。では、どちらの方が税額に対する影響が大きいでしょうか?

答えは「税額控除」です。説明します。

所得控除は、所得から控除されるもので確定申告書の⑬~㉘です。有名どころで「社会保険料控除」「医療費控除」「配偶者控除」「扶養控除」「基礎控除」など全部で15種類あります。

例えば先の例の役員報酬1,500万円の役員が医療費を年間80万円支払っており、他の所得控除の合計が400万円の場合、控除後の所得は835万円(1,500万円-195万円-医療費控除70万円(10万超部分が控除の対象)-他の所得控除400万円)です。確定申告書では㉚を指します。

この控除後の所得835万円に対して税率を乗じて税額を算出します。ちなみに今回の場合、税率は23%です。

税額控除は、上記過程で算出された税額から控除することができます。確定申告書では㉜~㊵です。有名どころでは「住宅ローン控除」です。ほかにもありますがダントツで普及しているのがこの控除です。

例えば先の役員が実は住宅をローンで購入しており12月末時点で4,000万円の残債となっている場合、28万円を税額から控除することができます。

【所得控除】医療費控除:70万円(80万円-10万円)

【税額控除】住宅ローン控除:28万円

金額だけを聞くと所得控除の方が影響額が大きいように思いますが、医療費控除は70万円×23%の16万円分税額を下げる効果があるのに対し、住宅ローン控除は28万円まるまる税額を下げる効果があるのです。

所得控除の紹介

ここでは掛金が「所得控除」の対象となり、将来積み立てた額を「退職金」や「年金」として受け取れる制度を紹介します。つまり、支払時は所得控除として税額を抑え、受け取る際は低い所得税率で計算を行うことが可能となるのです。詳しい制度内容ではなくどのようなメリットがあるかを記載します。

  • 小規模企業共済
  • 確定拠出年金(iDeco)

小規模企業共済とは、法人役員や経営者が将来の廃業や退職金の為に国の共済機関に積み立てる制度です。この制度のいいところは下記3つです。

  • 掛金すべてが所得控除の対象になる
  • 受取時に退職金や年金など低い所得税率により計算できる
  • 積み立てている額の7~9割の額を低い金利で借入れが可能

先の役員が毎月5万円を積み立てた場合、年間60万円の所得控除が増えますので約14万円(60万円×23%)の税額を下げることができます。さらに、積立額60万円の9割の54万円借入れます。とすると、積立時に60万円支出がありますが14万円税額を下げ、さらに54万円借入を行いますので手元に68万円(14万円+54万円)残るのです。不思議な話です。極端な例ですがこういった形でこの制度を利用することも可能です。

次にiDecoです。これは確定拠出年金と呼ばれるものです。こちらのメリットは下記です。

  • 積立金額は所得控除の対象となる
  • 運用益は非課税
  • 受取時に退職金や年金など低い所得税率により計算できる

同じような運用益の非課税枠がある制度としてNISAがありますが、こちらは投資額を所得控除に使うことはできませんので、これからNISAを始めようか迷っている方(単純に株式投資をしたい方は別として)、投資信託に少し興味がある、将来の資金の為に少し頑張ってみようかな。と考えている方はまずは掛金を所得控除に使えるiDecoを先に始めることをお勧めします。

まとめ

所得税は「収入」にかかるのではなく、「収入」から「経費」「所得控除」を差し引いた後の額に対して税率をかけ算出します。さらに「税額」から「税額控除」を差し引いて「納付税額」となります。

「所得控除」には積立額を全額控除として使え、将来の積立額の受取時には退職金や年金など低い税率で所得税の計算をすることができる制度があり、使い方次第で将来の資金繰りの支えを作りながら税額を下げることが可能です。

生きている中で必ず触れ、毎年納める所得税について皆様の理解にすこしでも貢献できていれば幸いです。詳しい制度内容や皆様お一人お一人が実際に各種制度を採用した場合の税額への影響額など、気なることがありましたら是非一度「お問合せ」からご連絡ください。